TICCA 金沢日和 Part10

金沢城跡の隣に佇むモダニズム建築

石川県政記念しいのき迎賓館

 

加賀百万石の城下町・金沢でも、時代の流れとともに地元の人たちに親しまれてきた建物が姿を消していきました。金沢で随一の繁華街である香林坊と兼六園を結ぶ百万石通りは、中央分離帯には桜並木が、歩道にはケヤキ並木が続き辰巳用水が流れる綺麗な並木道です。香林坊から兼六園に向かって右側の歩道沿いは、民間の商業ビルが次々と建て替えられすっかり景観が変わってしまいましたが、 左側の歩道沿いには大正時代からの景観がそのまま残されています。

旧県庁舎を改装した「しいのき迎賓館」

県庁自体は 2002 年に移転したのですが、かつての県庁舎は現在も残されています。それが「しいのき迎賓館」です。2010 年 4 月に総 工費 20 億円をかけて完成した建物で、大通り沿いは旧い県庁舎の外壁をそのまま残し、建物の裏手に回るとガラス張りの最新の外観になっています。東京の丸の内では、歴史のあるビルを高層ビルに建て替える際に、低層階は旧い外観のままで、中層階以上が最新の外 観という工法がトレンドとなっていますが、しいのき迎賓館は表が昔、裏が現代というデザインです。

エントランスを抜けると手前に見える「中央階段」は、県庁時代からのものがほぼ現存の形で引き継がれています。中央から両側へ分岐する折れ方は、やはり県庁の階段って感じがします。再利用できる素材を可能な限り生かし、加えて精度の高い技術で復元することで、 目新しさのない見事な改修が行われています .「しいのき迎賓館」のステンドグラスは、2階から3階への階段室と3階の上り切ったすぐの廊下に面した部屋のドアにステンドグラスが保存されています。昭和初期に流行したアールデコデザインのはしりとも言われているそうです。

そしてこちらが解体の後に増築された北側の内観です . 1 階部分は兼六園周辺の総合案内も行う「しいのきプラザ」となっています。既存南側の境界となる壁面の上部分にはトップライト。歴史的建物の数スパン分だけ躯体を残し、残りは吹き抜けやガラスで現代的に改築する手法は「KITTE(旧東京中央郵便局)」と似たスタイル。レストラン ジャルダン ポール・ボキューズは、フランス料理界の巨匠「ポー ル・ボキューズ」の本店と同じ料理が味わえるレストラン。金沢食材も活かしたフランス料理をお楽しみいただけます。
旧庁舎の雰囲気を可能な限り復元し、現代的空間を挿入して新しい価値(金沢城への眺望)を取り入れる。古い建築を積極的に活用する 施設の多い金沢という土壌もあったからこそ、こういう前衛的な県庁舎活用ができたのかもしれません。見てるだけでも絵になる素晴らしい庁舎をぜひ訪れてみてください。


石川県政記念 しいのき迎賓館
〒920-0962 石川県金沢市広坂 2 丁目 1 番 1 号
TEL:076-261-1111 FAX:076-261-1115

『JR 金沢駅から』
JR 金沢駅バスターミナル 兼六園口(東口)3、6、8、9、10、11 番、
金沢港口(西口)5 番乗り場よりバスにて「香林坊(アトリオ前)」下車(所要約 10 分)、徒歩約 5 分

 


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